ある夜

 

眠れない日の部屋の色は青い。

ほんものの闇なんてないんだと思う。

薄闇は群青から、目が慣れてほの青くなり、それが永遠に続くかのように思えてくる。

 

隣に眠る君の手を握る。暖かい。静かな寝顔を眺めるけど、それも薄い青のベールがかかって、手の温かさがなければ死んでいるかのように見える。死んでいないとも、誰も囁かない。

 

どうかこんな夜が続けばいい。いや、今夜が最後ならいい。僕らがこうして手を繋いでいる星に別の星が降ってきて、すべてが無に帰す瞬間を想像した。それはきっと、静寂をそのまま保存するようなもの。真空、化石、星も破壊されるなら誰に見つかることもない完全なふたりぼっち。

 

静かな夜はただ続き、薄青の闇はいつか白んで朝が来る。そのことを僕は知っている。僕だけが知っている、錯覚?

 

それでも、こんなに静かで穏やかな夜はここで終わらせ保存するべきだという妄想は終わることなく、しかし僕らの日々も終わることなく、平穏は続かない。わかっている、そんな簡単なこと。安らかな寝顔を保存したいという願望の自分勝手なことも。愛らしさは寂しさ、触れているのに手が届かない。

 

君だけが何も知らない。

でもそれでいい。

手をゆっくりとつなぎ直して、ふたたび寝具に身を沈めた。やわらかい羽毛入の布団の中でいったい何羽の鳥が死んだのか、それを数える人はいない。羊が一匹、羊が二匹……数え終わることの無いその呪文と同じで、眠り意識を失うことは。

 

愛は、自分勝手だ。

星が降ってくるのを止められないのと一緒だ。僕はそれを願う。自発的ではなくそれが「起こる」ことを期待して。

 

でもね、やっぱり君の「おはよう」は聞きたいな。